高粘度ディスペンサーの仕組みを図解!スクリュー・モーノ・ジェット方式の違いとは

はじめまして。製造技術コンサルタントの田中 誠一です。大手電機メーカーで15年以上にわたり生産ライン自動化と流体塗布工程の設計・改善に携わり、現在は独立して中小製造業へのディスペンサー導入支援を行っています。
「高粘度材料がうまく吐出できない」「塗布量がバラついて品質が安定しない」——こうした現場の悩みを、私はこれまで数えきれないほど耳にしてきました。ディスペンサーの方式選定を間違えると、どれだけ高価な装置を導入しても期待通りの結果は得られません。
本記事では、高粘度材料の塗布でよく採用されるスクリュー方式・モーノ方式・ジェット方式の3つについて、それぞれの動作原理・メリット・デメリット・向いている用途を丁寧に解説します。装置選定で悩んでいる方はもちろん、「なんとなく使っているけど原理がよくわからない」という方にも役立てていただける内容です。ぜひ最後まお読みください。
目次
そもそも高粘度ディスペンサーとは?
ディスペンサーの基本的な役割
製造現場で使われる「ディスペンサー」とは、液体を定量かつ精密に吐出する装置の総称です。接着剤の点付け、シール材のビード状塗布、電子部品へのポッティング(充填)など、幅広い工程で活躍しています。
装置の基本構成は次のとおりです。
- 液体を貯蔵するタンクまたはバレル(シリンジ)
- 液体を計量・移送するポンプ機構
- 吐出量とタイミングを制御するコントローラー
- 液体を対象物(ワーク)へ届けるノズル
これらが組み合わさってディスペンサーシステムを形成します。用途や液体の種類によって、最適な吐出方式が大きく異なるため、正しい方式を選ぶことが品質安定の第一歩です。
高粘度材料の特性と塗布の難しさ
粘度とは「液体の流れにくさ」を示す指標で、単位は「mPa・s(ミリパスカル秒)」または「Pa・s(パスカル秒)」で表されます。水の粘度が約1mPa・sであるのに対し、高粘度材料と呼ばれるものは数万〜数百万mPa・sに達することもあります。
製造現場で扱われる高粘度材料の代表例は以下の通りです。
- エポキシ系接着剤・シリコーン接着剤
- 放熱グリース・放熱シート代替材料
- クリームはんだ・導電性ペースト
- 液体ガスケット(FIPG/CIPG)
- フィラー(金属・セラミック粒子)入り樹脂
こうした材料は「チクソトロピー性(チクソ性)」を持つものが多く、力を加えると粘度が下がり、静置すると元に戻る性質があります。この特性を利用すると塗布後のタレを防ぎやすい一方、吐出時の圧力制御が難しくなる側面もあります。また、フィラーを含む材料はポンプやスクリューを摩耗させるリスクがあり、接液部の材質選定も重要な課題となります。
スクリュー方式(オーガ式)の仕組みを図解
スクリュー方式の動作原理
スクリュー方式(オーガ方式とも呼ばれます)は、ネジ状の形状をした「スクリュー(オーガ)」をモーターで回転させ、その推進力によって液体を定量的に押し出す方式です。
動作の流れはシンプルです。エア加圧などでスクリューに液体を供給し、モーターがスクリューを回転させると、液体はネジ溝に沿って前方へ押し進められ、ノズルから吐出されます。吐出量はスクリューの回転量に比例するため、回転速度を精密に制御することで安定した定量吐出が可能です。
吐出量の調整が「回転量」という機械的な値で管理されるため、エア圧送式のように液体の残量や粘度変化に左右されにくく、再現性の高い塗布が実現します。
スクリュー方式のメリット・デメリット
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ✅ メリット | 回転速度制御による高精度な定量吐出 |
| ✅ メリット | フィラー入り材料への推進力が強い |
| ✅ メリット | 連続吐出・ビード塗布に安定して対応 |
| ✅ メリット | 幅広い粘度範囲に対応可能 |
| ⚠️ デメリット | スクリューとシリンダーの摩耗に注意が必要 |
| ⚠️ デメリット | 微量吐出(ナノリットルレベル)には限界がある |
| ⚠️ デメリット | 洗浄・メンテナンスの工数がかかりやすい |
スクリュー方式が向いている用途
スクリュー方式が本領を発揮するのは、クリームはんだや導電性ペースト、放熱グリースなどフィラーを含む高粘度材料の塗布です。液体材料をスクリュー形状のロッドを回転させることで押し出す方式は、推進力に優れているため、粒子(フィラー)が入った放熱材料や導電性接着剤などの粘度の高い液体材料の塗布に適しています。
特に、途切れなく線を描く「ビード塗布」や、同じ場所への繰り返し塗布で精度が求められる工程に向いています。
モーノ方式(一軸偏心ねじ方式)の仕組みを図解
モーノ方式の動作原理
モーノ方式は「一軸偏心ねじポンプ」の原理を応用したディスペンサーです。構造の核心となるのは、雄ねじ形状の「ローター」と雌ねじ形状の「ステーター」という2つの部品です。
ローターがステーターの内部で回転すると、両者の隙間に密閉された空間(キャビティー)が形成されます。このキャビティーはローターの回転とともに連続的に移動し、液体を吸い込んで前方へ搬送し、最終的にノズルから押し出します。
最大の特徴は「無脈動(むみゃくどう)」です。一軸偏心ねじポンプにおいて、ローターとステーターによって形成されるキャビティーの断面積は、ローターの位置に関わらず、どの瞬間でも一定です。吐出される量も常に一定なので、無脈動・定量移送が可能となります。脈動がないということは、塗布量や形状が均一に保たれやすく、高品質な仕上がりにつながります。
また、ローターとステーターがニードル(ノズル)直近に配置されているため、制御信号への応答が速く、タクトタイムの短縮にも貢献します。
モーノ方式のメリット・デメリット
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ✅ メリット | 無脈動・高精度の定量吐出 |
| ✅ メリット | 粘度変化や材料残量に左右されにくい |
| ✅ メリット | 100万mPa・s超の超高粘度材料にも対応可能 |
| ✅ メリット | 連続運転での安定性が高い |
| ⚠️ デメリット | ローター・ステーターは消耗部品であり、定期交換が必要 |
| ⚠️ デメリット | 逆回転でのサックバック(液切り)が必要な場合がある |
| ⚠️ デメリット | 初期費用・部品コストがやや高め |
モーノ方式が向いている用途
モーノ方式は、粘度変化が起きやすい材料や、長時間連続して安定した吐出が求められる工程で特に威力を発揮します。モーノディスペンサーは、液体の粘度が変わったり、バレル内の液体残量が少なくなっても、ローターとステーターで機械的に吸込・吐出するため、吐出量はほとんど変化しません。
そのため、シリコーン接着剤・エポキシ樹脂・金属ペーストのような材料を、長時間にわたって均一に塗布し続けたい現場に最適です。特に、材料ロスを減らしてコスト削減を図りたい工程にも向いています。
プランジャーポンプ式についても言及しておくと、こちらは「シリンダー内のプランジャー(ピストン)を往復させて液体を高精度に定量する方式」で、モーノ方式と同じく容積計量の一種です。高粘度から超高粘度まで対応可能で、半導体製造や医療分野での採用例も多いです。なお、NLCディスペンサー(ナカリキッドコントロール)の高粘度材料の塗布に対応したプランジャーポンプ式ディスペンサーは、最大1,050,000mPa・sという超高粘度材料への対応と、19.6MPaの高圧吐出能力を持つ製品として注目されています。
ジェット方式(非接触式)の仕組みを図解
ジェット方式の動作原理
ジェット方式は、ノズル先端をワーク(塗布対象)に接触させることなく、液滴を「飛ばして」塗布する非接触式のディスペンサーです。
駆動源によって「電磁弁(ソレノイド)式」と「ピエゾ素子式」の2種類に大別されます。
電磁弁式は電磁石の力でバルブを高速開閉させ、液滴を吐出します。構造がシンプルで比較的コストを抑えやすい反面、電磁弁の経年劣化による性能低下が起こりやすい点がデメリットです。
一方のピエゾ素子式は、電圧を加えると微細に変形する「ピエゾ(圧電)素子」でロッドを高速往復させ、液滴を押し出します。ピエゾ素子は性能が永続するため、エアー(電磁弁)式ジェットディスペンサーのように部品の経年劣化による性能低下が起こりにくく、長期間にわたり高精度を持続することができます。また、電圧によってストロークや速度などのパラメーターをデジタルで精細に設定できるため、様々な液剤の特性に柔軟に対応できます。
ジェット方式のメリット・デメリット
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ✅ メリット | ワークと非接触のため、デリケートな部品を傷つけない |
| ✅ メリット | Z軸の上下動が不要で高速塗布が可能(タクトタイム短縮) |
| ✅ メリット | 入り組んだ場所や不均一な表面への塗布が可能 |
| ✅ メリット | ナノリットルレベルの微量塗布が可能 |
| ⚠️ デメリット | 超高粘度材料(数百万mPa・s超)への対応には限界がある機種も |
| ⚠️ デメリット | 液飛散(ミスト)が発生しやすい場合がある |
| ⚠️ デメリット | パラメーター設定・調整に専門知識が必要 |
ジェット方式が向いている用途
ジェット方式は、電子基板への防湿剤塗布・LEDへの蛍光体塗布・スマートフォン部品の接着など、高速・高精度な微小塗布が求められる用途で絶大な力を発揮します。
特に、1秒間に数百〜数千ショットという高速吐出により、生産タクトタイムの大幅な短縮が可能です。非接触(ジェット)式ディスペンサと多軸ロボットによる斜めからのグリス塗布でインパネ部品やドア部品の狭小部分に対応といったような、人手や接触式装置では困難な複雑形状への塗布にも対応できます。
3方式を徹底比較
3方式の特性を一覧表でまとめます。
| 比較項目 | スクリュー方式 | モーノ方式 | ジェット方式 |
|---|---|---|---|
| 対応粘度範囲 | 低〜高粘度 | 低〜超高粘度(100万mPa・s超) | 低〜高粘度(機種依存) |
| フィラー入り材料 | ◎ 得意 | ○ 対応可 | △ 機種選定が必要 |
| 定量精度 | ○ 高い | ◎ 非常に高い | ○ 高い |
| 塗布速度 | ○ 標準 | ○ 標準〜速め | ◎ 非常に速い |
| 接触 / 非接触 | 接触式 | 接触式 | 非接触式 |
| 主な用途 | ビード塗布・連続塗布 | 精密定量塗布・連続塗布 | 微量点付け・高速塗布 |
| メンテナンス | 中程度 | 定期部品交換あり | パラメーター管理が必要 |
この表からわかる通り、どの方式にも一長一短があります。「最も優れた方式」というものは存在せず、塗布する材料の特性・求める精度・生産スピード・ワーク形状によって最適解が変わります。
高粘度ディスペンサー選定の実践ポイント
現場でディスペンサーを選ぶ際、私が必ずチェックする7つのポイントを紹介します。
- 液体の粘度範囲とフィラーの有無:粘度の数値と、硬質フィラー(銀、アルミナなど)が含まれるかを事前に確認する
- 要求される吐出精度:±数%の精度で十分か、それとも半導体レベルの精密さが必要かを定義する
- 塗布パターン:点付け(ドット)か線塗り(ビード)か充填(ポッティング)かで最適な方式が変わる
- タクトタイム:1個あたりの塗布にかけられる時間を明確にする
- ワーク形状:傷つきやすいワークや入り組んだ形状には非接触式が有利
- メンテナンス体制:定期交換部品のコストや清掃の手間を運用コストとして見積もる
- 塗布テストの実施:導入前に実機テストを行い、実際の材料・ワークで結果を確認する
特に「フィラー入り高粘度材料×精密定量」を同時に求める工程は難易度が高く、スクリュー方式やプランジャーポンプ方式の比較検討が重要になります。武蔵エンジニアリングのディスペンサー種類解説ページでも、各方式の使い分け基準が詳しく紹介されていますので、参考にしてみてください。
まとめ
本記事では、高粘度ディスペンサーの代表的な3方式について解説しました。
- スクリュー方式はフィラー入り材料の連続塗布・ビード塗布に強い
- モーノ方式は無脈動・超高粘度対応で長時間安定した定量吐出が得意
- ジェット方式は非接触・高速塗布で微量点付けやタクトタイム短縮に向く
どの方式も、材料特性や塗布条件に合わせて選ぶことが大前提です。選定を誤ると品質不良・装置トラブル・材料ロスという三重苦に陥りかねません。「なんとなく従来と同じ方式で」と流れで選ぶのではなく、まずは使用材料の粘度・フィラーの有無・要求精度・塗布パターンを整理するところから始めてください。
迷ったときは、メーカーのテストルームを活用して実際の材料・ワークで塗布テストを行うことを強くお勧めします。現場の課題が具体化されていれば、メーカーの技術者も適切な提案をしやすくなります。ぜひ本記事を装置選定の第一歩として活用していただければ幸いです。


